■安田大将さん 2017年センバツは「3試合とも自分たちらしい野球ができた」
3月18日から甲子園球場で開幕する第96回選抜高等学校野球大会に出場する32校が決定した。九州地区から7年ぶり3度目の出場を決めた東海大福岡には、前回2017年のセンバツ8強を知る元エースがいる。安田大将(だいすけ)コーチは、当時を懐かしそうに振り返る。
「今、この立場になって思うのは、周りの人から色々支えていただき、応援していただいたお陰で、3試合とも自分たちらしい野球ができたのかなということです」
安田さんが一躍注目されたのは、早実(西東京)との2回戦だ。マウンドから18.44メートル先には、入学当初から騒がれ続け、試合前まで高校通算79発を放っていた清宮幸太郎(現日本ハム)がいた。
「同級生ですけど、ずっとテレビの中の存在で、そういうバッターと試合をできたというのは大きな経験でした。でも、相手が誰だからといって、これまでのスタイルを変えることなく勝負できたと思います」
実は、思わぬところから助言を受けていた。開会式で、同じくセンバツに出場していた福岡大大濠の古賀悠斗(現西武)と話す機会があった。福岡大大濠は前年の神宮大会で早実と対戦。清宮を間近に見ていた捕手から「清宮はローボールヒッターだよ」とアドバイスされたという。
「映像とかを見ても、低めを打つのが凄く上手なんですね。だから、外は全部ボールで、あとはインコース高めの真っ直ぐで勝負しようと話をして試合に臨みました」
安田さんは当時、最速120キロ台ながら、サイドハンドから浮き上がるような直球と、ストライクゾーンの四隅を丁寧に突くスライダー、シンカーが持ち味。1回戦の神戸国際大付戦では奪三振0ながら1失点完投勝利と、打たせて取る投球術で強力打線を翻弄してきた。
そんな清宮対策が功を奏し、最初の2打席は三飛、一ゴロと完璧に抑えた。6回は打ち取った飛球をセンターとライトがお見合いする不運で三塁打としたが、後続を抑え、6回終了時点で9対1とワンサイドゲームの様相を呈して終盤を迎えた。
ただ、清宮も黙っていなかった。先頭で迎えた8回、一塁線を破る二塁打を皮切りに失点を重ねたが、最終的には11対8で逃げ切り。準々決勝で優勝した大阪桐蔭に敗れはしたものの2対4と善戦し、同校初の8強進出に大きく貢献した。
進学した関西国際大では同期の翁田大勢(現巨人)と練習をともにしながら地歴・公民の教員免許を取得。「支えてくれた方々のために恩返しがしたい」という思いから、卒業後の2022年4月、母校に戻り、野球部のコーチに就任。そこからわずか2年で教え子たちを甲子園へと導いた。
「今のチームは新チームになった時に“あの時の8強を超える”という目標を立ててやってくれています。甲子園に出たら、周りからの見る目が変わってくるので、試合以外の部分でも立ち居振る舞いも大事になってくる。観客も増えるので、いつもと違うことをするのではなく、しっかりと自分たちの野球をやってほしいなと思います」
そう言って後輩たちを頼もしそうに見つめる安田さん。先輩コーチからの心強いサポートを背に、東海大福岡ナインは8強超え、さらにその先の栄冠へと挑む。