■松坂大輔さん、館山昌平さん、古木克明さんが指導。フリーアナの上重聡さんが司会、中日・涌井秀章投手も参加
「松坂世代」の精鋭たちが、これまで培ってきた技術を育成世代に伝えた。12月1日、東京都西東京市の早大安部磯雄記念野球場で野球教室が行われた。
師走の幕開けにも関わらず、ポカポカ陽気の中で行われたお待ちかねの野球教室。西東京市、小平市の少年野球28チーム、約170人の視線は、豪華な講師陣に向けられた。
まずは日米通算170勝を誇る松坂大輔さんを筆頭に、ヤクルトで2009年に最多勝に輝いた館山昌平さん、横浜(現DeNA)、オリックスで通算58本塁打を放った古木克明さんに、現役プロ野球選手の涌井秀章投手(中日)が参加。司会進行を務めたフリーアナウンサー・上重聡さんが軽妙なトークで会場を沸かせた。
松坂さんは、投球方向へ真っ直ぐ踏み出すことの重要性を強調。質問コーナーでは、高校時代に1週間で3000球の投げ込みをした驚がくのエピソードを披露した上で、甲子園伝説の試合として名高い1998年夏、横浜ーPLの延長17回、250球完投勝利について、「当時は、甲子園で250球投げても、まだまだ投げられると思っていました。(上重アナとの)投げ合いが楽しいなという部分と、早く勝って終わらせたいという気持ち、両方ありました」と懐かしそうに振り返った。
現役時代、ケガに泣かされた館山さんは、肘と膝を痛めている選手から「どのような気持ちで過ごせばいいでしょう」という質問に、「勇気を持って休みましょう」と助言。「お医者さんの言うことが絶対で、例えば2週間休みましょうと言われたら、本当に投げたらダメだよ。僕は言うことを聞かなかったから、10回も手術をすることになりました」と話し、周囲を笑わせた。
内野守備と打撃を担当した古木さんは、タイミングの取り方について丁寧に指導。「自分も今は中学生を教えている立場で、いろいろな人の教え方があって、凄く楽しいなと思いながら参加させてもらいました。野球から離れて結構経ちますけど、55年(生まれ)のつながりで呼んでいただいている部分もあるので、野球をやっていて本当によかったなと思います」と感謝した。
講師陣唯一の現役選手となった涌井投手は、これまで対戦した中で一番凄かった打者を問われると、「(ソフトバンクの)近藤健介じゃないですかね」と即答。横浜高の後輩でもある左打者の特徴について「三振は取れないし、あいつは狙って本塁打も打てる。みんな、ああいう嫌がられる打者を目指しましょう」と子どもたちに呼びかけた。
世代が集まっての野球教室は、大盛況のうちに幕を閉じた。館山さんは「もう来年45歳になりますが、一緒に甲子園を目指したあの時のまま、野球で仕事ができるというのは、感慨深いものがありますね」。和田毅投手(元ソフトバンク)が今季限りで現役を引退し、球界を席巻した世代は全員が第一線から退いたが、その経験を次世代へと伝える役割は、まだまだ始まったばかりだ。