■元オリックス、ヤクルトで活躍…岩﨑久則さんが母校監督で迎える初めての夏「まずは目先の1勝」
元プロの岩﨑久則監督が率いる大分高が7月12日に全国高等学校野球選手権大分大会の初戦を迎える。岩﨑監督は付属の大分中学リトルシニア監督から、昨秋、母校の大分高監督に就任。今春の大分大会で優勝し、16季ぶり8度目の出場となった九州大会では8強入りするなど、早々に結果を残した。
「昨秋は就任したばかりとあって、上級生を中心に使ったら2回戦で負けました。普通にやればベスト8かベスト4にいくだろうなというところで、僕自身が失敗しました。それで春は中学から見ていた計算の立つ子を使って、結果を出すことができました。夏もそういう使い方になると思います。まずは目先の1勝しか考えていません」
プロでは主にリリーフとして、オリックス、ヤクルトで8年間プレー。通算39試合の登板に終わったが、両球団で日本一も経験するなど、セパの強豪チームで研鑽の日々を送った。ヤクルトで名捕手として活躍した古田敦也と初めてバッテリーを組んだ日のことを、岩﨑さんは今でも鮮明に覚えている。
「トレードでヤクルトに入ってすぐにファームで結果が出て、野村克也監督がすぐに1軍に上げてくれたんです。それで、古田さんとの打ち合わせもそこそこに、初球はスライダー、そして真っ直ぐ、最後はフォークで、そこから全部フォークでした」
チェンジになった後に、ベンチでその真意を問うと、古田からは「後悔してほしくないから」と返され、こう言われたという。
「今、全部ボールを見たけど、ウィニングショットはフォークでしょう? はっきり言って申し訳ないけど、自信のない真っ直ぐやスライダーを打たれるよりは、フォークを打たれた方が、後に尾を引かないと俺は思っているから。中継ぎで1イニングなんやから、全部ウィニングショットでいこう」
そこからは、真っ直ぐやスライダーを見せ球に、得意のフォークを随所で多投した。同じ打者にウィニングショットを何球も投げることに、怖さはなかったのだろうか。
「僕はフォークに自信があったから、そっちの方がよかったですよ。古田さんは先発投手はバッターを見ながらある程度配球を考えると思うんですけど、中継ぎは僕に限らず、その投手の特徴を活かした球を放らせているなと思っていました」
後悔してほしくない…。高校野球の監督になった今、その言葉の重みをかみしめている。だから、選手たちには、常に本番を想定した練習を行わせている。
「常日頃から、こういう状況なら監督は何のサインを出すのかなと想定させています。『ほら、出たな』となったら、失敗する確率も少ないと思っています」
監督、選手ともに後悔のないワンプレーを積み重ねたその先に、2016年以来の夏聖地が見えてくる。岩﨑さんが母校を率いて迎える初めての夏は、まもなくやってくる。