■福岡・直方市拠点「株式会社 直方建機」新枦達也社長「ようやく試合慣れしてきた」
かつては炭鉱の街として栄えた筑豊の地で、野球チームを立ち上げた企業がある。福岡県直方市に拠点を置く「株式会社 直方建機」は、2024年4月より軟式野球部を発足。全日本軟式野球福岡県連盟に加入し、本格的に活動をスタートさせた。
直方建機は、建築機械の修理、整備を手がける会社として1969年(昭和44年)に創業。その後、機械の販売やレンタル業など、業務の幅を広げ、今では福岡県内に10カ所の事業所を構える地域密着型の企業へと成長した。それではなぜ、このタイミングで軟式野球部を立ち上げたのか。新枦達也社長が、経緯を語ってくれた。
「若手を中心とした現場から『野球部を作ってくれませんか』という声が上がってきたのが大きかったですね。今は全社で130人ほど社員がいるのですが、普段はバラバラの事業所で勤務しているので、集まる機会がなく、社員同士でも知らない人が多いんですね。野球でつながることができればと思い、立ち上げに至りました」
直方建機には元々野球経験者が多く、部員も20~35歳の13人がすぐに集まった。新枦さんも、部にユニホームなどの野球道具一式を提供し、マイクロバスも購入するなど、最大限のバックアップを約束。今夏も時間の許す限り試合を観戦し、選手と同じく真っ黒に日焼けしながら声援を送った。
「みんなハツラツとプレーしていますが、何せ暑いですね(笑)。大変だろうと思いながら見ています。ようやく試合慣れしてきたかなという感じです。個々の経験や能力はあるので、これからですね」
■野球強豪校も訪問…採用面にもプラス 配属先は居住地から近い県内10カ所の事業所
新たに立ち上がった会社の“顔”を、採用面に生かしていきたい狙いもある。新卒社員の獲得のため、普段は機械科のある工業高校などを周り、自社をアピールするが、軟式野球部が発足したことで、強豪として知られる九州共立大や飯塚高の野球部を訪問。営業層にも変化が生まれた。
「直方建機という社名を聞いたら、北九州地区や福岡地区の人は『直方まで通勤できない』と思われがちです。でも、私どもは、県内に各事業所があって、お住まいの住所から最寄りの事業所への配属を基本としています。高校などを毎年訪問させていただくのですが、まずはそこを強く説明しています」
■直鞍支部の2部に所属…主に直方市内で週末活動「楽しくケガなくやってもらえたら」
野球部の活動は基本、週末や祭日に限るので、戸畑や福岡の営業所に勤める部員も、休日に車で通うことができる。現在は直鞍(直方市、宮若市、鞍手町、小竹町の区域全体の略称)支部の2部に所属。中泉市民球場など、主に直方市内のグラウンドで練習や試合を行っている。
「ずっと勝ち上がって実績を残していったら1部に昇格できるのでしょうが、まだまだ今からです。どんどん野球つながりで新卒の方も入っていただきたいし、決して勝利至上主義というわけではないので、みんなが楽しく、ケガなくやってもらえたらいいですね」
創業から半世紀以上の歴史を持つ直方建機の新たな試みは、まだ“プレーボール“のコールが鳴り響いたばかりだ。野球という国民的スポーツを通じて、会社の財産である「人」を発掘し、大切に育成していく。