第105回全国高校野球選手権沖縄大会の決勝が16日に行われ、沖縄尚学が日本ウェルネスを3–0で下し、代表決定一番乗りを果たした。沖縄尚学は今春センバツに続く2季連続、夏は2年ぶり10度目の出場となる。先発のエース東恩納蒼(3年)が初出場を狙う日本ウェルネス打線を相手に最速145キロの直球と切れのある変化球を武器に三塁を踏ませない好投で完封勝利。打線も初回、4回、8回と効果的に得点を重ね、甲子園切符をつかみ取った。
昨秋九州王者の大本命・沖縄尚学が優勝を果たした沖縄は順当だったと言えるが、全国では甲子園常連の私学が苦戦、または早々に敗退ケースが続出している。福岡では福岡工大城東、筑陽学園が初戦敗退。西日本短大付は4回戦で嘉穂に6-5と冷や汗をかきながらも5回戦に進出した。
和歌山では春夏4度の全国制覇を誇る智弁和歌山も初戦で高野山に2-4で敗れた。和歌山大会での初戦敗退は、武内晋一(元ヤクルト)らを擁した2001年以来、実に22年ぶりとなる。
岡山では前東海大相模監督の門馬敬治監督が率いる創志学園も岡山南に5-8で敗れ夏初陣を飾れず。新潟では元日本ハムの芝草宇宙さんが監督を務める第1シードの帝京長岡が、進学校の長岡にまさかの0–7コールド負け。3回戦で姿を消した。
愛知では愛工大名電が大府に、高知では明徳義塾が中村にいずれも1点差で辛くも逆転勝利を納め、初戦を突破した。私学全盛の時代に、公立高校が奮闘を見せている。
それではなぜ公立が盛り返しを見せてきたのか。2021年春に入学した現3年生はコロナ禍だったこともあり、私学でも練習に制限がかけられることも少なくなかった。そのため、公立との実力差が比較的少なくなったことも要因の一つとしてあげられる。
それと、所得制限があるとはいえ、公立高校の無償化も無関係ではないだろう。近年の物価高の影響は家計を直撃。ましてや高校3年間では数百万円もの金額を支払う必要があるため、両親が私学への進学にストップをかける場合がある。
私学には特待制度こそあるが、野球特待生は各校5名以内とすることや、入学金や授業料以外の寮費などの生活費支援を認めないという決まりがある。私学の特待生になれなかった選手たちが、学費のかからない公立に流れていく図式は想像に難くない。また、ロッテの佐々木朗希のような投手が、中学の仲間とともに岩手の大船渡に進み、花巻東や盛岡大付といった私学を倒したいといったレアケースも存在する。
公立が甲子園を制したのは2007年夏の佐賀北が最後。2018年夏に決勝に進出した金足農(秋田)は大阪桐蔭の分厚い壁に跳ね返された。甲子園に出場する商業高校や工業高校の数も少なくなってきたが、今年はどうか。公立高校の奮闘に期待したい。