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子どもたちに「ベースボール5」を教える吉永健太朗さん。2011年夏の甲子園では“魔球”シンカーを武器に全国制覇を果たした

■昨夏日大三で甲子園2勝…安田虎汰郎投手に“シンカー”伝授 吉永健太朗さん「腕を真下に振る」

 東京六大学リーグ春季リーグ戦は、第5週を終えて、慶大と早大がそれぞれ6勝2敗、勝ち点3で首位に並んでいる。両チームともに光るのは、入学したばかりの1年生の活躍だ。

 慶大は、昨夏甲子園で慶応高(神奈川)の107年ぶり全国制覇に貢献した渡辺憩捕手が、リーグ史上初の快挙をやってのけた。

 4月29日の法大戦、1-1で迎えた延長12回1死に代打でリーグ戦初打席サヨナラ弾の大仕事。翌週の立大戦では2試合でスタメンマスクをかぶるなど、4試合に出場して8打数6安打3打点と打ちまくっている。

 早大では安田虎汰郎投手の活躍が目を引く。昨夏に日大三(西東京)のエースとして甲子園で2勝を挙げ、高校日本代表に選出。台湾で行われたU-18杯で初の世界一に貢献した。

 高校時代に培ったピンチでも動じない精神力が、リリーフの場面で生きている。開幕週の立大戦。1回戦、3回戦ともに同点の8回から登板して1回を無失点に抑えると、味方がその裏に勝ち越し、開幕同一カード2勝を達成。第3週、明大との1回戦では、1点リードの9回1死満塁から登板して打者2人を抑え“初セーブ”を挙げるなど、小宮山悟監督の信頼を見事に勝ち取った。

 その安田が得意とする変化球が、シンカー軌道に揺れながら落ちるチェンジアップだ。六大学の強打者たちを手玉にとるこの“魔球”は、日大三ー早大の大先輩である吉永健太朗さんから指導を受けて完成に至ったボールだった。吉永さんが振り返る。

「昨年、小倉全由監督が勇退するタイミングで、日大三高に挨拶に行った時に、僕の1個下の村井(諒)コーチから『安田をちょっと教えてください』と依頼を受けて、一緒にキャッチボールをやりました。僕も試合を見ていた訳ではないので、それまでどれぐらいの完成度だったかは分からないんですけど、こうしたら良くなるだろうというところはあったので、そこをアドバイスさせていただきました」

 吉永さんと言えば、左打者に対して一度浮き上がり、そして逃げるようにして落ちていくシンカーを武器に、2011年夏の甲子園を制した好投手。早大でも、1年春からリーグ戦に登板し、大学日本一に輝いている。その“魔球”を習得する際、浮き上がるがゆえに、投げ方を勘違いする投手が多いという。

「安田くんは、ボールを上に“押す”感じが強かったので、『もう少し下に向かって投げてあげると、ボールは落ちてくれるよ』という話をしました。僕のシンカーは入りが上に上がるので、真似をすると上に投げる人が多いんですけど、上に投げる意識は全くなくて、腕を真下に振るんですよ。抜ける握りで投げているので、勝手にボールが上がってくれます」

 安田は、その“金言”をきっかけに、甲子園出場、高校日本代表で世界一、そして早大で1年春から登板と、シンデレラストーリーを駆け上がった。吉永さんも、後輩の一挙手一投足に注目している。

「あの状況で使ってもらえるのが凄いです。1年春から投げることができる投手もなかなかいないので、大学4年間の入りとしては、いいスタートが切れたと思います。先輩の有原航平さん(現ソフトバンク)も2年の春までは後ろで投げていて、その秋から先発でやっています。将来的には多分先発になると思うので、それまでに長く投げられる体力などを準備しておけば、プロに行ける選手になると思うので、頑張ってほしいです。凄い気にかけて見ています(笑)」

 吉永さんの期待を一身に背負いながら、安田は名投手への階段を一歩ずつ上っていく。

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