■明豊・川崎絢平監督「キャッチボールは3年間で教えることができない」
名門高校の監督は、中学球児をスカウトする際、どこを一番重視するのだろう。明豊高校(大分)の川﨑絢平監督は「キャッチボールですね」と断言する。
「守備やバッティングは3年間でどうにでもなるんですけど、キャッチボールだけは3年間で教えることができません。自分がキャッチボールが得意だったということもあると思うのですが、中学生を見るときはどうしてもそこから見てしまいます。しっかり投げることができる子を獲りますね」
川崎監督は智弁和歌山時代は1年夏からベンチ入りした97年夏の甲子園で全国制覇を経験。遊撃手として活躍し、3年連続で夏の甲子園にするなど、名手として鳴らした。
明豊は強打のイメージが多いが、大切にしているのは守備練習。特に送球ミスは走者がセーフになるだけではなく、次塁まで進塁してしまう確率も高く、絶対に防がなければならない。練習では、ダイヤモンドで行うボール回しを、通常の塁間距離より10メートルほど短くし、1時間ほどかけて行うこともある。
「短い距離の中で“遊び”を覚えてほしいんですよね。高校生だとまだ長い距離を投げようとすると反動を使わないと投げられない子が多いです。ゆくゆくは短い距離の感覚で、ベース間も投げられるようになってほしいという狙いがあります」
短距離のボール回しと同じく大切にしているのは投内連係。一塁、二塁、三塁、そして本塁と、悪送球になれば、何度もやり直しをさせながら、短い距離を投げる感覚を養わせる。
「練習で投げることができても、試合になったら投げることができない子もいる。野球をやったことがない人には分からないですよね。『投手って投げるのが仕事なのに、なんであんな近い距離を投げることができないの』って思う人も多いです。こういうプレーでのミスで負けたくないので、丁寧にやっています」
明豊は昨秋の九州大会で準優勝し、第96回選抜高等学校野球大会(3月18日開幕、甲子園球場)に出場。21年には準優勝しているだけに、目指すはその先の栄冠ただ一つしかない。
「もちろん出るからには優勝を目指します。あの優勝が5年後、10年後の明豊の上昇気流の契機になったと言われるような学年になってもらいたいですね」
今や九州のみならず、全国でも指折りの強豪に数えられる明豊を目指す小中学生は、キャッチボールから大切に、日々の練習を送ってもらいたい。