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西武時代の涌井のキャッチャーミット
涌井が西武時代に練習で使用していたキャッチャーミット

 今回はアマチュア野球から離れ、プロ野球でクイズを出してみたい。あなたは12球団の中で一番日本シリーズから遠ざかっている球団を即答できるだろうか。

 正解はDeNAでも楽天でもない。埼玉西武ライオンズだ。2008年に日本一となって以来、昨シーズンまで実に14年もの間、日本シリーズに進出していないのである。

 1979年に前身の西鉄ライオンズが福岡から埼玉の所沢に移転して今年で44年目。その間にリーグ優勝18度、日本一10度と輝かしい成績を収めてきた。ただ、辻発彦監督の下、2018年、2019年とリーグ優勝こそ果たしたが、クライマックスシリーズでいずれもソフトバンクに敗退。日本シリーズ進出は夢と消えた。遠い頂上決戦。では2008年シーズンはどうやって日本一へと駆け上ったのだろうか。その軌跡を振り返ってみたい。

 松坂大輔という絶対的な柱を失った2007年、チームは26年ぶりのBクラスに低迷。伊東勤監督が辞任し、渡辺久信2軍監督が昇格、チームの再建を託された。しかし長らく打線の中核を担った和田一浩、カブレラの両主砲がそれぞれ中日、オリックスに移籍。いきなり前途多難の船出となったが、渡辺監督はそれを逆にチャンスととらえた。

 まずは2001年ドラフト同期の栗山巧と中村剛也の打順を2番と6番に固定した。すると、栗山は最多安打、中村は本塁打王を獲得。今でも現役を張れる足がかりを作った1年だったと言っていいだろう。さらに1番片岡易之、3番中島裕之、4番ブラゼル、5番G・G・佐藤の上位打線もほとんど替えることなく、チームで198本塁打と圧倒的な長打力で他球団を圧倒。和田とカブレラの穴を一丸で埋めて見せた。

 投手陣も前年に最多勝を獲得した涌井秀章を軸に、FAでヤクルトから獲得した石井一久、帆足和幸、岸孝之の4本柱全員が2桁勝利を挙げたのも大きかった。終わってみれば4月5日に立った首位を一度も明け渡すことなくゴールテープを切った。

 今では「鬼門」となったクライマックスシリーズでも強さを発揮した。第2ステージで日本ハムと対戦。涌井で先勝したものの、2戦目でダルビッシュ有に完敗。続く3戦目も落としたが、4,5戦目と連勝し4勝2敗(1勝のアドバンテージ含む)で4年ぶり日本シリーズに進出した。

 そして日本シリーズ。巨人と94年以来となる「GL決戦」は球史に残る名勝負となった。西武の1勝2敗で迎えた第4戦。岸がシリーズ史上初の毎回奪三振での完封でタイに戻すと、王手をかけられた第6戦、中2日でリリーフ登板し2勝目を挙げ、逆王手をかけた。

 運命の第7戦。渡辺監督は勝負に出た。何と右内転筋の張りで1カ月以上も実戦から遠ざかっていた西口文也を先発させたのである。長年エースとして君臨したベテランだったが、シリーズ白星には無縁でここまで過去0勝5敗。その右腕にチームの命運を託したのである。初回に1点を失い、2回には先頭の坂本勇人に本塁打を浴び、この回限りで降板となったが、ここから究極の継投が始まる。石井一、涌井がそれぞれ2回ずつ、星野智樹が1回、そして守護神のグラマンが2回と、4人が完全救援。2回、坂本に被弾後の西口も含め、巨人の強力打線を24人連続でアウトに仕留めた。

 打線が投手陣の奮闘に応えたのは1―2の8回だ。先頭の片岡が死球で出塁すると、続く栗山の初球、二盗を成功させる。バントで三塁へと進んだ後、中島の三ゴロでギャンブルスタートをかけ、同点のホームを踏んだ。そして平尾博嗣が試合を決める決勝タイムリーと、この回わずか1安打で2点を奪い逆転。まるで黄金期の西武を彷彿とさせる試合運びで、4年ぶりの日本一へと辿り着いた。

 渡辺監督は優勝インタビューで「チームの思いと、家族の思いと、何より全国のライオンズファンの思いがこの2連戦に凝縮したと思います。やるからには日本一を目指そうと思ったし、1年で何とか強いチームに立て直そうと思ってやってきました。日本シリーズが始まる前に、原監督とも最高の日本シリーズにしようという話をしていたので、7戦目までもつれて、最高の日本シリーズができて本当にうれしいです」と声を張り上げ、東京ドームに駆け付けたレオ党は歓喜した。

 あれから15年…。西武は一度もセ・リーグとパ・リーグの覇者が雌雄を決する大舞台に出ていない。チームは今年から松井稼頭央新監督が就任。森友哉という要を失ったが、早稲田大学で東京六大学野球リーグ通算13本塁打を放った蛭間拓哉外野手をドラフト1位で獲得するなど、期待の新戦力も多い。

 今はGMとして手腕を振るっている渡辺元監督もチームを影から支える。工藤公康、渡辺久信、石毛宏道、秋山幸二、清原和博…。あの、憎たらしいほどまでに強かったライオンズの黄金時代再来をファンは願ってやまない。

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